私が“スポーツトレーナー”として選手をサポートする事を目指し、“投球障害”と呼ばれる肩や肘のケガを防ぐための投球フォームやトレーニング方法について野球少年に向けて講習を行うような立場になるという過程は、私の中ではごく自然な流れでした。

そんな折、繰り返し肘を痛めていた一人の野球少年(A君)と出会い、こんなやりとりがありました。

 A君:「僕はもう、ボールを投げていいですか?」

  私:「この肘の状態ではまだ厳しいなぁ・・。」

私の返答は、なんとも中途半端なものでした。

恥ずかしながら、この時の私はケガの本質を捉える事が出来ていなかったのです。

そもそも、なぜ、肘や肩を痛めるのか。

同じように練習しているのにケガをする子としない子がいるのはなぜか。

単純に[投げ方が悪い]や[投げすぎ]のような説明では、納得する事が出来ませんでした。

その日をきっかけに私がケガの本質を探求するという日々が始まりました。

その結果、人体の「骨格と動作の特性」を理解する事にたどり着き、投球障害の本質は『投げる時の体の重心』と『利き腕(肘より先)の偏り動作』の2つであると気づきました。

他にも年齢や体の傾向によって原因が変わりますが、本質的な部分は同じです。

そしてこれらは、“日にち薬”で改善するものではなく、痛みが取れても同じ体の状態でボールを投げてしまえば、また同じように痛めてしまう事は容易に想像できます。

そう体堂での施術により『体の重心』と『偏り動作』の改善を実感できると、痛みを治す為だけではなく、練習やトレーニング時の動作の改善にもつながると考えています。

もしも、あの日のA君や野球小僧だった頃の自分に、この本質を伝える事が出来たなら、一体どんな将来が待っていたのだろう・・。と、今でもつい思いを巡らせてしまいます。